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腎疾患:血中ウロキナーゼ受容体は巣状分節性糸球体
硬化症の発症因子である

Nature Medicine 17, 8 doi: 10.1038/nm.2411

巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)は、タンパク尿を伴う腎疾患の発症原因の1つであり、自己腎臓および移植腎臓の両方を障害する。未知の血清因子が存在するなど、病因が複雑であることから、その治療には限界がある。今回我々は、原発性FSGS患者の3分の2では血清中の可溶性ウロキナーゼ受容体(suPAR)が増加しているが、他の糸球体疾患患者ではこうした増加が見られないことを報告する。さらに、移植前にsuPARが高値であることが、移植後のFSGS再発のリスク上昇の一因となることがわかった。また、3種類のマウスモデルを用い、suPARが腎臓の機能および形態に及ぼす影響について検討した。循環血中のsuPARは自己腎臓および移植腎臓の足細胞β3インテグリンを活性化して、それにより足突起消失、タンパク尿およびFSGS様糸球体症を惹起することを示す。今回の知見は、suPARが足細胞β3インテグリンを十分に活性化する場合のみFSGSが発生することを示唆している。したがって、血漿交換法による血清suPAR濃度の低下、あるいはsuPARまたはβ3インテグリンのいずれかを標的とする抗体や小分子によるsuPAR-β3インテグリン相互作用の阻害により、この疾患は防止可能であると考えられる。我々の研究により、血清suPARはFSGSを引き起こす可能性のある血中因子であることが明らかになった。

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