Article がん:P53とTCTPの間の相反的抑制 2012年1月1日 Nature Medicine 18, 1 doi: 10.1038/nm.2546 腫瘍復帰スイッチとしてがん細胞を再プログラム化する遺伝子のスクリーニングから、TCTP(translationally controlled tumor proteinをコードする)がアポトーシスの重要な調節因子であることが明らかになった。本論文では、P53とTCTPの間に存在する負のフィードバックループについて報告する。TCTPは、P53-MDM2含有複合体との結合をNUMBと競合することでP53分解を促進する。TCTPはMDM2の自己ユビキチン化を阻害し、MDM2が仲介するP53のユビキチン化と分解を促進する。Tctpハプロ不全マウスは、P53依存性アポトーシスに感受性を示す。さらに、P53はTCTP転写を直接抑制する。508例の乳がんで、TCTPの高発現は低分化型で悪性度の高いG3段階の腫瘍と関連しており、予後不良を示している(P <0.0005)。ErbB2トランスジェニックマウス由来の初代乳がん細胞でTctpをノックダウンすると、P53の発現増加と幹細胞様がん細胞の減少が起こる。薬理活性のある化合物セルトラリンやチオリダジンは、MDM2-P53軸へのTCTPの作用の中和により、P53量を増加させる。この研究は、がんへのTCTPのかかわりの基盤と考えられる、これまで知られていなかった調節回路でのTCTPとP53のつながりを示している。 Full text PDF 目次へ戻る