Technical Report
がん:遠隔操作型ナノ変換器としてアップコンバージョン・ナノ粒子を用いるin vivo光線力学療法
Nature Medicine 18, 10 doi: 10.1038/nm.2933
従来型の光線力学療法(PDT)は、この方法が効果をもたらすのに必要な可視光の透過深度による制限を受けている。今回我々は、メソ多孔質シリカで被覆したアップコンバージョン蛍光ナノ粒子(UCN)を、深部まで透過する近赤外光を可視光波長に変換するナノ変換器として、また光感受性物質の担体として用いた。また、このUCNの持つ単一励起波長での多色発光特性を利用して、強化型PDTで使われる2種類の光感受性物質の同時活性化を行った。2種類の光感作物質を使うこのPDTの有効性は、1種類の光感受性物質を使う方法に比べて大きいことが、一重項酸素の発生増大と細胞の生存能力低下の測定によって明らかになった。in vivo実験でも、黒色腫へのUCNの直接注入、もしくは腫瘍を標的とする薬剤を結合させたUCNの担がんマウスへの静脈内注射によりPDT療法を行ったマウスでの腫瘍増殖阻害が明らかになった。この知見は、光感受性物質を結合したUCNがin vivo標的化PDT剤となることを、我々が知る限りで初めて実証したものであり、将来の深部がんの非侵襲的治療法の基盤技術になる可能性がある。