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心疾患:サーチュインSIRT6はc-Junを標的としてIGF-Aktシグナル伝達経路を妨害し、心肥大発症を防止する

Nature Medicine 18, 11 doi: 10.1038/nm.2961

インスリン様増殖因子(IGF)-Aktシグナル伝達の異常活性化は、心不全などの多様な疾患の発症にかかわっている。しかし、このシグナル伝達経路の活性化を調節する分子機構は十分に解明されていない。今回我々は、核のヒストンデアセチラーゼであるサーチュイン6(SIRT6)が、クロマチンレベルで機能してIGF-Aktシグナル伝達を直接減弱することを示す。SIRT6欠損マウスは心肥大および心不全を発症したが、SIRT6遺伝子導入マウスは肥大性刺激から保護されており、これはSIRT6が心肥大に関する負の調節因子として作用していることを示している。SIRT6欠損マウスの心臓では、IGFシグナル伝達関連遺伝子群およびその下流にある標的遺伝子の過剰活性化が認められた。機構的には、SIRT6はIGFシグナル伝達関連遺伝子のプロモーターに結合し、c-Junとの相互作用とヒストン3のLys9(H3K9)の脱アセチル化を介してこのプロモーターを抑制する。また、心不全に陥ったヒト心臓では、SIRT6発現が低下することもわかった。今回得られた知見は、SIRT6とIGF-Aktシグナル伝達経路との間の今まで知られていなかった関連を明らかにし、SIRT6の心肥大および心不全の進行の発症への関与を示している。

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