HIV:SAMHD1は休止期CD4+ T細胞のHIV-1感染を制限する
Nature Medicine 18, 11 doi: 10.1038/nm.2964
休止期CD4+ T細胞は、活性化CD4+ T細胞とは異なり、HIV-1の増殖性感染に対して高い抵抗性を示す。侵入するウイルスゲノムの逆転写は、HIV-1侵入後の早い時期に、重要な防御障壁の1つによって制限される。今回我々は、デオキシヌクレオシド三リン酸トリホスホヒドロラーゼであるSAMHD1が、休止期CD4+ T細胞でHIV-1 RNAの逆転写を防ぐことを示す。SAMHD1は、末梢血を循環中、あるいはリンパ器官に常在している休止期CD4+ T細胞で豊富に発現している。無刺激のCD4+ T細胞の感染に対する初期抑制は、ウイルスVpxを人為的に取り込ませたHIV-1ビリオン、またはウイルスVpxを本来持っているHIV-2ビリオンによって、また外来性のデオキシヌクレオシドの添加によって打ち消される。Vpxの仲介によりSAMHD1がプロテアソーム分解され、細胞内デオキシヌクレオチド量が増加すると、Vpxを持つHIVによる感染が成功するようになる。健常人ドナー由来のSAMHD1をサイレンシングした休止期CD4+ T細胞、もしくはSAMHD1のナンセンス変異がホモ接合性であるアイカルディ-ゴーシェ症候群患者由来の休止期CD4+ T細胞は、HIV-1感染を許容する。このようにSAMHD1はin vivoで、非増殖性CD4+ T細胞の大規模なプールにおけるHIV-1感染を効果的に抑制している。SAMHD1を回避しただけではウイルス子孫の放出には不十分であり、HIV複製のより後期の段階にまた別の障壁が存在するものと考えられる。これらの知見は、汎発性HIV-1の免疫回避とT細胞免疫病態を妨げる新たな方法につながる可能性がある。