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血管ニッチのEセレクチンは造血幹細胞の休止状態、自己複製および化学療法抵抗性を調節する
Nature Medicine 18, 11 doi: 10.1038/nm.2969
幹細胞の細胞運命を主として決定しているのは、その周囲の微小環境、つまりニッチである。造血幹細胞(HSC)については、骨髄に解剖学的に異なる2種類のニッチが存在することが報告されているが、これらのニッチの機能が異なっているのかどうかは明らかになっていない。本論文では、血管HSCニッチの骨髄内皮細胞だけに発現している接着分子のEセレクチンの新規な役割について報告する。Eセレクチンノックアウト(Sele−/ −)マウス、あるいはEセレクチンアンタゴニスト投与後のマウスでは、休止状態にあるHSCが増え、自己複製能が上昇し、EセレクチンがHSCの増殖を促進し、血管ニッチの重要な構成要素であることが明らかになった。このような作用は、典型的なEセレクチンリガンドによっては仲介されない。Eセレクチンの欠失あるいは機能の遮断は、化学療法薬の投与あるいは放射線照射を行った後のマウスのHSC生存数を3倍から6倍まで増加させ、血中好中球の回復を促進する。骨髄抑制は高用量化学療法の重篤な副作用なので、Eセレクチンの一時的な遮断は化学療法あるいは放射線照射の際にHSCを保護するための有望な処置になる可能性がある。