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幹細胞:WntおよびmTOR経路の調節を介した造血幹細胞の維持
Nature Medicine 18, 12 doi: 10.1038/nm.2984
造血幹細胞(HSC)の自己複製や細胞系譜の拘束は、微小環境との複雑な相互作用に依存している。臨床応用あるいは基礎研究のためのHSCの維持あるいは増殖は、このような相互作用が十分に解明されていないことで大きく制限されている。最近の研究結果では、HSCが低灌流部位で栄養物質の少ないニッチに常在しており、栄養物質を感知する経路がHSCの恒常性にかかわっていることが示唆されている。本論文では、栄養センサーであることが確立されているmTOR経路の抑制と、典型的なWnt—βカテニンシグナル伝達の活性化を組み合わせると、ex vivoのサイトカインが存在しない条件で、ヒトおよびマウスの長期骨髄再建能を持つHSCの維持が可能になることを報告する。また、2種類の臨床承認薬の併用はWnt—βカテニンシグナル伝達の活性化とmTORシグナル伝達の抑制の両方を同時に引き起こして、長期骨髄再建能を持つHSCの数(割合ではない)をin vivoで増加させることも示す。