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造血:ジペプチジルペプチダーゼ4はコロニー刺激因子の活性とストレス後の造血を負に調節する
Nature Medicine 18, 12 doi: 10.1038/nm.2991
放射線照射、化学療法、あるいは造血幹細胞(HSC)移植の後の造血回復の増進は、臨床で大きな問題となっている。ジペプチジルペプチダーゼ(DPP4)は、ケモカインであるSDF-1(stromal cell-derived factor-1)などの多様な基質を切断する。DPP4の阻害が、造血前駆細胞のSDF-1を介する生存、ex vivoでのサイトカインによる増殖およびコロニー形成率を上昇させることを明らかにするための実験の過程で、DPP4がコロニー刺激因子(CSF)活性の調節にさらに一般的な役割を担っているという予想外の知見が得られた。DPP4は、顆粒球マクロファージ(GM)-CSF、G-CSF、インターロイキン3(IL-3)およびエリスロポエチンをN末端内部で切断し、活性を低下させた。Dpp4のノックアウト、あるいはDPP4の阻害は、in vitroおよびin vivoの両方でCSF活性を上昇させた。DPP4によって切断されたヒトGM-CSFの活性が完全長ヒトGM-CSFより低くなる機序は、受容体への結合親和性、GM-CSF受容体のオリゴマー形成誘導およびシグナル伝達能への切断の影響と関連している。放射線照射あるいは化学療法後のマウスでの造血は、Dpp4−/ −マウスあるいは経口DPP4阻害剤を投与されたマウスで増進していた。DPP4の阻害は、マウスでHSC機能を低下させることなくその生着を高めたことから、この方法は臨床的に有用であると考えられる。