Technical Report
薬物送達系:エストロゲンの標的化送達によるメタボリックシンドロームの回復
Nature Medicine 18, 12 doi: 10.1038/nm.3009
我々は、ペプチドを使うことで核ホルモンの薬理効果を選択した組織に標的化し、ほかの組織への副作用を排除できる、新しいコンビナトリアル手法を開発した。ここでは、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)—エストロゲン結合体の開発について述べる。この結合体は、マウスでの肥満、高血糖、脂質異常症に対して優れた解消効果があり、この効果は性別に依存せず、個々のホルモンのどちらかを単独で投与した場合を上回っている。その治療的効果は、機能喪失モデルや遺伝的作用プロファイリングから示されるように、多面的な二重のホルモン作用によるエネルギー、グルコースおよび脂質代謝の改善によっている。さらに、ペプチドを使ったこの標的化戦略によって、雌雄マウスでエストロゲンが示す生殖内分泌毒性や発がん性などの顕著な副作用も防がれる。結合体を使うことで、GLP-1によって標的とされた組織でのエストロゲン受容体の選択的活性化が、前例のないほどの効力で、GLP-1の薬物受容体活性化作用の代謝的効果を増大している。メタボリックシンドロームを標的とした今回の例は、ペプチドを使った小型分子の選択的送達により、受容体の共活性化を可能とする新しい種類の治療法の発見といえる。このGLP-1—エストロゲン結合体を用いた観察結果は、糖尿病や肥満に関するトランスレーショナル研究の正当性を明らかにしているが、ペプチドと低分子の組み合わせはほかにも多数考えられ、それらはほかの疾患にも今回と同様の効果をもたらすと期待される。