Article 聴覚:cGMP-Prkg1シグナル伝達とPde5阻害は蝸牛有毛細胞および聴覚機能を保護する 2012年2月1日 Nature Medicine 18, 2 doi: 10.1038/nm.2634 騒音性難聴(NIHL)は、世界的に見られる健康障害で、病態生理学的および社会的に相当重要だが、有効な治療法は存在しない。サイクリックグアノシン一リン酸(cGMP)は、心臓、肺などの臓器では外傷に応答して保護的な過程を促進する。そこで、cGMP依存性プロテインキナーゼI型をコードする遺伝子(Prkg1)を遺伝的に欠失させたマウスでNIHLについて調べ、このようなマウスは、欠失のないマウスに比べてNIHLを発症しやすく、回復も非常に起こりにくいことがわかった。Prkg1は野生型マウス内耳の感覚細胞およびニューロンで発現しており、その発現はcGMP加水分解性ホスホジエステラーゼ5(Pde5)の発現プロファイルと一部が重複していた。ラットおよび野生型マウスにPde5阻害剤バルデナフィルを投与すると、NIHLがほぼ完全に防止され、有毛細胞およびラセン神経節でPrkg1依存性にポリ(ADPリボース)の上方制御が引き起こされた。このことは保護的に働く内在性のcGMP-Prkg1シグナル伝達経路が、ポリ(ADPリボース)ポリメラーゼを活性化させることを示唆している。今回の結果は、バルデナフィルまたはそれに近縁の薬剤が、NIHL治療の薬剤候補となることを示唆している。 Full text PDF 目次へ戻る