Letter 白血病:RUNX1はT-ALLにおける腫瘍抑制因子であることが、TLXの発がん転写ネット ワークのリバースエンジニアリングによって明らかになった 2012年3月1日 Nature Medicine 18, 3 doi: 10.1038/nm.2610 転写因子であるTLX1とTLX3がん遺伝子は、T細胞性急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)の発症原因に重要な役割を担っている。今回我々は、全転写ネットワークのリバースエンジニアリングにより、TLX1とTLX3によって制御される発がん性調節回路の解明を試みた。このシステム生物学的解析によって、TLX1(T cell leukemia homeobox 1)およびTLX3が、T-ALLを統御する発がん性の転写回路のマスター調節因子であることが明らかになった。また、この階層的ネットワークのネットワーク構造解析によって、RUNX1がTLX1とTLX3によって誘導されるT-ALLの重要なメディエーターであることが突き止められ、T細胞の形質転換にRUNX1が腫瘍抑制因子として働くことが予測された。ヒトのT-ALLでRUNX1の機能喪失型体細胞変異の頻発が明らかになったことは、これらの結果と一致する。まとめると、これらの結果は白血病発症を制御する発がん性転写ネットワークの頂点にTLX1とTLX3を位置づけるもので、ヒトのがんを統御する調節回路中の重要な因子の同定にネットワーク解析が高い能力を持つことを示しており、またRUNX1がT-ALLにおける腫瘍抑制遺伝子であることを明らかにしている。 Full text PDF 目次へ戻る