CD4ヘルプを受けていないCD8+ T細胞は、CD4+ T細胞ヘルプがない状態でプライミングを受けた、機能に欠陥があるT細胞である。CD8+ T細胞のNKG2D(natural-killer group 2, member D protein)は共刺激的に働くと考えられるので、このような免疫学的に無力な細胞を回復させる能力について調べた。プライミング時のNKG2Dを介する共刺激の増強により、記憶CD8+ T細胞応答は回復されるが、エフェクター応答は回復されないことが明らかになった。NKG2Dを介した回復は、転写因子T-bet(T-box expressed in T cells)の発現上昇の消失、インターロイキン2とインターフェロンγの産生回復、および細胞融解応答の回復が特徴である。こうした回復は、NKG2Dを欠くCD8+ T細胞では起こらなかった。NKG2Dを介した共刺激の増強は、CD4依存性インフルエンザモデルでCD4+ T細胞を欠損するマウスの生存率を高め、CD4を欠くHIV陽性ドナーのHIV特異的CD8+ T細胞応答を回復させる。今回の知見は、NKG2Dを介する共刺激の増強が、CD4ヘルプを受けなかったCD8+ T細胞の異常な細胞運命からの救済に有効であることを実証しており、治療に役立つものと考えられる。