Article がん:チロシンホスファターゼSHP2は、重要な転写因子の活性化およびシグナル伝達の正のフィードバックループを介して乳がんの進行を促進し、腫瘍開始細胞を維持する 2012年4月1日 Nature Medicine 18, 4 doi: 10.1038/nm.2645 新しいがん治療は、腫瘍の開始、進行および転移に影響を与えるシグナル伝達ネットワークの徹底した解明から生まれると考えられる。本論文では、HER2(human epidermal growth factor receptor 2)陽性および トリプル陰性の乳がんで、これらの過程におけるSHP2(Src-homology 2 domain-containing phosphatase 2)の重要な役割を明らかにする。SHP2のノックダウンは、異種移植モデルで乳がんの腫瘍開始細胞を根絶し、またSHP2の枯渇も、三次元培養やin vivoの乳管内移植モデルでの細胞浸潤アッセイで浸潤を防止した。特に、確立した乳腺腫瘍でのSHP2ノックダウンは、その増殖を阻害し、転移を低減した。SHP2の作用機構は、c-Myc(v-myc myelocytomatosis viral oncogene homolog)やZEB1(zinc finger E-box binding homeobox 1) などの幹細胞性関連転写因子を活性化し、その結果、マイクロRNA let-7の抑制と一連の「SHP2シグネチャー」遺伝子の発現を引き起こすというものであった。これらの遺伝子は、浸潤行動と予後不良と関連するヒト原発性乳腺腫瘍のかなりの割合で同時に活性化されていることが見いだされた。以上の結果は、腫瘍開始細胞に影響を与えるシグナル伝達カスケードについての新しい手がかりを与えるばかりでなく、乳がんでSHP2を標的とすることの論理的根拠を示している。 Full text PDF 目次へ戻る