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白血病:LSD1(KDM1A)デメチラーゼの阻害は急性
骨髄性白血病で全transレチノイン酸分化
シグナル伝達経路を再活性化する

Nature Medicine 18, 4 doi: 10.1038/nm.2661

急性前骨髄球性白血病(APL)は、急性骨髄性白血病(AML)の細胞遺伝学的に異なるサブタイプで、t(15; 17)転座PML-RARA融合を特徴とする白血病であり、全trans型レチノイン酸(ATRA)を使う白血病芽球の分化誘導による治療が成功している。しかし、非APL AML患者に対しては、ATRAによる治療は有効でない。今回我々は、トラニルシプロミン(TCP)などのリシン特異的デメチラーゼ1(LSD1、別名KDM1A)阻害剤は、エピジェネティックな再プログラム化を介して、ATRAが誘発する治療応答性を非APL AMLで再活性化することを示す。LSD1の阻害は、ゲノム全体にわたるヒストン3 Lys4ジメチル化(H3K4me2)の大規模な増加にはつながらなかったが、H3K4me2は増加し、骨髄分化に関与する遺伝子発現が増大した。特に、ATRAとTCPを併用投与すると、NOD(nonobese diabetic)-SCID(severe combined immunodeficient)マウスにおける初代ヒトAML細胞のin vivoでの生着が著しく低減し、ATRAとTCPとの併用では白血病開始細胞が標的となる可能性が示唆された。さらに、NOD-SCID γ(インターロイキン2受容体γ鎖を欠損する)マウスにヒトAML細胞を移植した15日後にATRAとTCPとの併用投与を開始した結果から、ATRAとTCPという組み合わせは、どちらか一方の薬剤のみの投与よりも優れた、強力な抗白血病作用を持つことが明らかになった。以上のデータは、LSD1が治療標的となることを明らかにし、またLSD1がATRAの正常な分化促進機能の阻害によってAML病理発生に関わっている可能性を示しており、このことはAMLに対する新規併用治療への道を開くと考えられる。

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