Letter 疼痛:P2X7受容体の遺伝的に決定されている小孔 形成は、慢性疼痛感受性のばらつきを調節 している 2012年4月1日 Nature Medicine 18, 4 doi: 10.1038/nm.2710 慢性疼痛は、鎮痛薬に対する反応と同様に、個体差がきわめて大きい。慢性疼痛と鎮痛応答におけるばらつきの多くは遺伝的なもので、このばらつきの基礎となる遺伝的決定因子の解明は進んでいない。今回我々は、P2X7受容体(P2X7R)をコードする遺伝子のコーディング配列内の変動が、マウスとヒトの両方で慢性疼痛の感受性に影響を及ぼしていることを示す。P2X7RはATP依存性イオンチャネル受容体のファミリーに属し、そのカチオンチャネルを介した機能と、900 Daまでの質量の分子を透過させる非選択的な小孔形成に基づく機能という2種類の機能を持つ。我々は全ゲノム連鎖解析を行ない、神経損傷によって誘発される疼痛行動(機械的異痛症)と、マウスP2rx7遺伝子のP451L変異との間に関連性があり、P451L変異によって小孔形成が障害されているP2X7Rを持つマウスでは、小孔が形成されるP2rx7対立遺伝子を持つマウスに比べて異痛症が少ないことを見いだした。P2X7RのC末端ドメインと一致するペプチドは、小孔形成を阻害するが、カチオンチャネル活性は阻害しない。このペプチドを投与すると、小孔を形成するP2rx7対立遺伝子を持つマウスのみで神経損傷および炎症性異痛症の軽減が見られた。さらに、乳腺切除後の疼痛があるコホートおよび変形性関節症を有するコホートという、慢性疼痛が見られる2つの無関係なヒト・コホートで、低い疼痛強度と、P2RX7対立遺伝子の機能不全変異体His270(rs7958311)との間に遺伝的関連が見いだされた。今回得られた知見から、P2X7Rによる小孔形成を選択的な標的とすることは、慢性疼痛の治療の個別化に向けた新規治療戦略となると考えられる。 Full text PDF 目次へ戻る