Editorial

便宜上の結婚

Nature Medicine 18, 4 doi: 10.1038/nm.2732

トランスレーショナル研究は研究助成を受けやすいことから、大学でもこの種の研究が多く行われるようになった。そして最近、こうした研究の成果に関心のある製薬企業などが行っている「民間と公共との提携(private-public partnership:PPP)」によって大学での研究が助成を受けるケースが、徐々に増えてきている。だが、PPPが研究費に占める割合が増えてきて、学問の自由という概念と衝突することが起これば、大学の研究者はついには「企業へのレンタル研究者」という不快な状況に陥るかもしれない。大学で働く研究者は、革新的な考え方をするのに不可欠な自立性を守っていく必要がある。トランスレーショナル研究を後押しするのが新規治療法の開発に必要なことは確かである。だが、公共的な研究助成金がトランスレーショナル研究に手厚かったことがこの種の研究を増やすきっかけとなったのだとしたら、こうした研究の進展は学問の自由を犠牲にして得られるものではないことを大学は思い出すべきだろう。

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