Technical Report ワクチン:過酸化水素を用いた新しいワクチン製造基盤技術の開発 2012年6月1日 Nature Medicine 18, 6 doi: 10.1038/nm.2763 安全で有効なワクチンは、公衆衛生の維持や感染症による世界的疾病負担の低減のためにきわめて重要である。本論文では、ワクチン製造のために過酸化水素(H2O2)を用いてウイルスを不活性化する、新しいワクチン製造基盤技術について報告する。H2O2は、抗原構造や免疫原性の損傷を最小限に抑えつつRNAウイルスとDNAウイルスの両方を迅速に不活性化し、ホルムアルデヒドやβ-プロピオラクトンのような従来のワクチン用不活性化剤と比べた場合、有効性が非常に高い。H2O2で不活性化したリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)で免疫したマウスは、細胞溶解性の多機能性ウイルス特異的CD8+ T細胞を産生し、それによって慢性LCMV感染が防がれた。同様に、H2O2で不活性化したワクシニアウイルスもしくはウエストナイルウイルスを接種したマウスは、高いウイルス特異的中和抗体価を示し、致死的攻撃誘発から完全に防御された。以上の研究結果から、H2O2を用いて製造したワクチンは免疫原性が高く、マウスで広範なウイルス病原体に対する防御をもたらし、今後のワクチン開発に向けた新しい有望な手法となることが実証された。 Full text PDF 目次へ戻る