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がん:大腸がんでβカテニンはPI3KやAKTの阻害物質に対する抵抗性を与え、FOXO3aに転移を促進させる

Nature Medicine 18, 6 doi: 10.1038/nm.2772

Wnt-βカテニン経路とPI3K-AKT-FOXO3a経路はがんで重要な役割を果たしている。AKTはFOXO3aをリン酸化して核から細胞質へと移行させるが、この作用はPI3KやAKTを阻害する物質により阻止される。Wnt-βカテニン経路の過剰活性化とPI3K-AKTシグナル伝達の阻害が同時に起こると、βカテニンおよびFOXO3aの核内集積がそれぞれ促進され、特定の標的遺伝子セットの調節によって細胞の分散と転移が進む。実際に、抗腫瘍作用のあるAKT阻害物質API-2はFOXO3aの核内集積を増進し、核内βカテニン含量の高い細胞の転移を促進する。患者由来の初代培養細胞、およびマウスに移植した同じ患者由来の異種移植腫瘍では、核内βカテニンが、PI3KやAKT阻害物質により誘導されるFOXO3a介在性アポトーシスに対する抵抗性を与える。この抵抗性はWnt-βカテニンシグナル伝達を阻害するXAV-939によって消失する。核内βカテニンが高濃度である場合には、FOXO3aはPI3KまたはAKTの阻害物質による活性化を受けると、アポトーシス誘導性の腫瘍抑制因子ではなく、転移誘発因子として働くようになる。治療方針の決定前に、患者のがん腫でのβカテニンの状態を調べ、また核内にFOXO3aを蓄積させるような分子標的薬に対する患者由来細胞の反応を調べることが可能であることを我々は明らかにした。このような評価は、より安全で効果的な個別化治療を提供するのに必須と我々は考える。

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