Letter 放射線損傷:トロンボモジュリン−活性化プロテインC経路の薬理学的標的化は放射線毒性を軽減する 2012年7月1日 Nature Medicine 18, 7 doi: 10.1038/nm.2813 電離放射線によって造血系および胃腸系に生じる組織損傷は、放射線緊急事態における主要な死亡原因であり、放射線療法を受けている患者で見られる有害な副作用の一部の発生原因である。放射線損傷を低減できる標的特異的介入手段を見いだすことは、いまだに解決されていない難題である。今回我々は、トロンボモジュリン(Thbd)−活性化プロテインC(aPC)経路が、全身照射(TBI)が原因の死亡を低減させる新規機序であることを突き止めた。内在性Thbd-aPC経路の影響は、Thbdを発現する細胞の局所的な微小環境におおむね限定されていたが、可溶性のThbdまたはaPCの全身投与により、内在性Thbd-aPC経路の放射線防護作用が再現・増強された。致死量の照射を受けた野生型マウスに、可溶性の組換え型ThbdまたはaPCを投与する治療を行うと、骨髄の造血前駆細胞活性の回復が促進され、致死量TBIによる死亡が低減した。このようなマウスでは、放射線への曝露の24時間後にaPC投与を開始しても、放射線が誘発する死亡を低減させることができる。以上の知見は、組換え型のThbdまたはaPCによるThbd-aPC経路活性の薬理学的増強が、電離放射線が原因の組織損傷および死亡を低減させる合理的な治療法となる可能性を示唆している。 Full text PDF 目次へ戻る