Letter 白血病:急性骨髄性白血病における受容体型チロシンキナーゼMETのオートクリン活性化 2012年7月1日 Nature Medicine 18, 7 doi: 10.1038/nm.2819 急性骨髄性白血病(AML)の治療はこの30年間で大幅に向上したが、全患者の半分以上は集中化学療法に反応しないAMLを発症する。機能ゲノミクスという手法は、がん細胞の異常な増殖や生存を仲介する特異的分子を検出するのに使うことができる。我々は、機能喪失性のRNA干渉によるゲノムスクリーニングを用いて、肝細胞増殖因子(HGF)の異常な発現がAMLの病因における重要な要素であることを突き止めた。検討したAML細胞株と臨床試料のおよそ半分で、HGF発現はその受容体チロシンキナーゼであるMETのオートクリン活性化を引き起こすことがわかった。HGFあるいはMETを遺伝学的に枯渇させると、HGFを発現するAML細胞の増殖と生存が強力に阻害された。しかし、METキナーゼ特異的阻害剤であるクリゾチニブを投与された白血病細胞では、HGFの補償的な発現上昇に起因する耐性が生じ、これがMETシグナル伝達の回復につながった。METが、繊維芽細胞増殖因子受容体1(FGFR1)などの他のチロシンキナーゼとともに活性化されているAMLの場合には、FGFR1とMETの同時阻害によってHGFの補償的な発現上昇が阻止され、その結果、in vitro、およびin vivo異種移植モデルの両方で持続的なLCK(logarithmic cell killing)が見られた。我々の結果は、AML細胞がMETのオートクリン活性化に広く依存していること、またMETによる白血病誘発シグナル伝達の維持にHGFの補償的発現上昇が重要な役割を担うことを明らかにしている。これらの知見は、補償的なリガンド発現を促進する適応細胞応答を遮断する補足的な戦略を、ヒトがんにおける発がん性受容体の標的化阻害の重要な構成要素として設計することにつながると期待される。 Full text PDF 目次へ戻る