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がん:神経前駆細胞はTRPV1刺激を介して高悪性度アストロサイトーマの細胞死を誘導する

Nature Medicine 18, 8 doi: 10.1038/nm.2827

世界保健機関の分類によれば悪性度が3あるいは4となる原発性アストロサイトーマ(高悪性度アストロサイトーマ:HGA)は、主に成人で発症し、集学的治療を用いてもほとんど例外なく死亡に至る。今回我々は、若齢の脳にはHGAに対する内因性の防御機構が存在することを示す。神経前駆細胞(NPC)はHGAに向かって移動し、HGA細胞上のバニロイド受容体TRPV1(transient receptor potential vanilloid subfamily member-1)を活性化するエンドバニロイドを放出することによって、グリオーマの拡大を抑制し生存期間を延長する。TRPV1は腫瘍で高度に発現しており、腫瘍のない脳での発現は少ない。TRPV1刺激は、小胞体ストレス経路のATF3(activating transcription factor-3)により制御される枝路を介して腫瘍細胞の細胞死を引き起こす。NPCの抗腫瘍形成応答は加齢とともに失われる。NPCが介在する腫瘍抑制は、合成バニロイドであるアルバニルの全身投与より成体脳で模倣でき、TRPV1アゴニストが新規なHGA治療薬となる可能性が考えられる。

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