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血管新生:病的な血管新生はATMによる酸化ストレス調節に依存する
Nature Medicine 18, 8 doi: 10.1038/nm.2846
ATM(ataxia telangiectasia mutated)キナーゼは、DNA損傷応答(DDR)のマスター調節因子で、細胞老化や腫瘍形成に対する障壁として機能する。ATMは、DDRシグナル伝達のほかに、酸化ストレス防御においても機能する。本論文では、マウスのAtmが活性酸素種(ROS)の蓄積に応答して未成熟な血管特異的に活性化されることを示す。マウスで全身あるいは血管内皮特異的にAtmを欠損させると、網膜での病的な血管新生が阻害された。この阻害は、標準的なDDR経路の異常ではなく、ROS量の増加およびマイトジェン活性化キナーゼp38αの過剰活性化の結果として引き起こされる。Atm欠損はまた、腫瘍の血管新生を低下させ、血管内皮増殖因子遮断の抗血管新生作用を亢進させた。これらのデータは、病的な血管新生にはATMを介する酸化ストレス防御が必要であること、また、過剰なROS産生を促進する薬剤が、血管新生病の治療に有益な効果を持つ可能性を示唆している。