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がん:インターロイキン9産生T細胞が仲介する、黒色腫に対するロバストな腫瘍免疫

Nature Medicine 18, 8 doi: 10.1038/nm.2856

インターロイキン9(IL-9)はT細胞が産生するサイトカインで、γCファミリー受容体を介して標的細胞に作用し、炎症やアレルギーに関連している。我々は、17型ヘルパーT(TH17)経路のROR-γ(retinoid-related orphan receptorγ)およびIL-23受容体(IL-23R)をコードする遺伝子を欠損するマウス由来のT細胞は大量のIL-9を産生することを明らかにし、このようなマウスではB16F10黒色腫の増殖が相当度抑制されることを見いだした。IL-9遮断抗体は、野生型(WT)マウスでこの腫瘍増殖阻害を無効にし、腫瘍の増殖を促進した。Il9r−/−マウスでは腫瘍の増殖促進がみられ、担がんWTマウスおよびRag1−/−マウスへの組み換えIL-9(rIL-9)投与は、黒色腫だけでなく、肺がんの増殖も抑制した。腫瘍抗原特異的なTH9細胞の養子移入は、WTマウスとRag1−/−マウスの両方で黒色腫の増殖を抑制し、この影響はIL-9の中和抗体投与によって消失した。外因性rIL-9はRag1−/−マウスで腫瘍増殖を阻害したが、マスト細胞欠損マウスでは腫瘍増殖を阻害しなかったことから、この条件下でのIL-9の標的にはマスト細胞が含まれるが、T細胞やB細胞は含まれないと考えられる。さらに、正常なヒト皮膚および血液では、進行性IV期黒色腫患者の転移巣に比べてTH9細胞数が多いことがわかった。これらの結果は、腫瘍免疫におけるIL-9の役割を示唆しており、治療戦略候補についての手がかりを与えるものである。

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