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免疫:Bat3はTim-3を介した細胞死と疲弊化の抑制によりT細胞応答と自己免疫を促進する
Nature Medicine 18, 9 doi: 10.1038/nm.2871
Tim-3(T cell immunoglobulin and mucin domain-containing 3)は、HIV-1やC型肝炎ウイルス感染の間に疲弊化したT細胞上で発現されている抑制性受容体である。これとは対照的に、複数のヒト自己免疫疾患では、Tim-3の発現と機能は欠如している。しかし、Tim-3の機能を調整する分子機構は十分解明されていない。今回我々は、Bat3(human leukocyte antigen B-associated transcript 3)がTim-3に結合し、その機能を抑制することを示す。Bat3は、1型ヘルパーT (TH1)細胞をガレクチン9を介する細胞死から防御し、増殖と炎症性サイトカイン産生の両方を促進する。Bat3を欠損するT細胞では、Tim-3、Lag3、Prdm1やPbx3などの疲弊化に関連した分子の発現が増加しており、またミエリン抗原特異的CD4+ T細胞でBat3をノックダウンすると、実験的自己免疫性脳脊髄炎の発症が大きく妨げられる一方で、機能不全のTim-3hi、インターフェロンγ(IFN-γ)loCD4+細胞集団の増殖が促進される。さらに、マウス腫瘍およびHIV-1感染患者由来の疲弊したTim-3+ T細胞では、Bat3の発現が低下している。これらのデータは、Bat3がTim-3に依存する細胞疲弊化と細胞死の抑制因子として働いていることを示しており、したがってBat3は自己免疫疾患、慢性感染症およびがんで有望な治療標的となる可能性がある。