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がん:治療が腫瘍微小環境にもたらす損傷はWNT16Bを介して前立腺がんの治療耐性を助長する
Nature Medicine 18, 9 doi: 10.1038/nm.2890
抗がん治療に対する獲得耐性は、悪性腫瘍が引き起こす病的状態や死亡の低減を妨げる重大な障壁となっている。組織微小環境の構成成分が、毒性侵襲に対する感受性などの細胞表現型に大きく影響することはすでに認められている。我々は、がん治療によって誘導される遺伝子毒性ストレスに対する転写応答について全ゲノム解析を行い、腫瘍微小環境に由来する一連の分泌タンパク質を同定した。その中には、Wntファミリーに属するWNT16B(wingless-type MMTV integration site family member 16B)が含まれる。WNT16Bの発現はDNA損傷後にはNF-κB(nuclear factor of κ light polypeptide gene enhancer in B cells 1)によって調節されるようになり、WNT16Bは次いでパラ分泌型のシグナル伝達によって、腫瘍細胞で標準的なWntプログラムを活性化することがわかった。前立腺腫瘍の微小環境でのWNT16Bの発現は、in vivoでの細胞毒性化学療法の効果を減弱し、腫瘍細胞の生存と疾患進行を助ける。これらの結果は、周期的に行われる遺伝子毒性療法が、腫瘍の微小環境が関与する細胞非自律的な影響を介してその後の治療耐性を増強しうる機序を明らかにしている。