筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、運動ニューロンに影響が及ぶ致死的な神経変性疾患である。疾患の発症や進行はさまざまであり、生存期間も数カ月から数十年までと幅がある。この多様性の原因となる因子は、治療介入の標的となる可能性がある。我々は、ALSのゼブラフィッシュモデルでスクリーニングを行い、エフリンによる軸索忌避系の受容体であるEpha4が、魚、齧歯類およびヒトでALS表現型の修飾因子であることを明らかにした。Epha4シグナル伝達の遺伝学的阻害や薬理学的な阻害は、ゼブラフィッシュでの変異SOD1表現型を救済し、ALSのマウスやラットモデルで生存期間を延長する。ALSで最も変性を起こしやすい運動ニューロンは、Epha4の発現レベルがより高く、また、軸索が切断された運動ニューロンによる神経筋再支配はEpha4の存在によって抑制される。ALS患者では、EPHA4発現がALSの発症や生存と逆相関し、またEPHA4の機能喪失型変異は長期生存と関連する。さらに、Epha4のノックダウンは、家族性ALSを引き起こすまた別のタンパク質である変異TDP-43(TAR DNA-binding protein 43)の発現によって引き起こされる軸索変性症や、smn1(survival of motor neuron 1)のノックダウンによって引き起こされる軸索変性症(脊髄性筋萎縮症のモデル)も救済することがわかった。このことは、Epha4が軸索変性に対する(運動)ニューロンの脆弱性を包括的に修飾しており、治療介入の新しい標的となる可能性を示唆している。