動脈内壁でのプラーク形成、つまりアテローム発生は、心血管疾患のリスクや心疾患につながることが知られている。血管内で炎症性細胞にコレステロールを送達する低密度リポタンパク質(LDL)は疾患と結びつけられていて、一般にコレステロール低下療法を使って管理される。循環血中からコレステロールを取り除く高密度リポタンパク質(HDL)の増加が、心臓を保護する方向に働くのかどうかは、初期の臨床研究で心血管疾患にプラスの効果があるという証拠が示されているのにもかかわらず、まだはっきりしていない。BENCH TO BEDSIDEではD J RaderとA R Tallが、この分野では単にHDLコレステロール値を増やそうとするのではなく、マクロファージから胆汁中への排出というコレステロールの汲み出しが起こるようなコレステロール逆向き輸送の促進の方に重点を置くべきである理由について論じている。この「HDL流動仮説」でさまざまな分子機構が作動する仕組みを解明すれば、心血管疾患や心臓病を防止するHDL標的療法開発への道が見つかると考えられる。BEDSIDE TO BENCHではJ W Heineckeが、複数の臨床研究を詳細に検討して、コレステロール逆輸送を臨床で測定するためのより簡単で、より優れた方法を提案している。HDLの機能にかかわる遺伝的変化や因子は、HDL機能を定量化したり、心血管疾患リスクを低下させる効果のある薬剤を発見するのに役立つかもしれない。