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骨髄由来サプレッサー細胞からの、化学療法によって誘発されるカテプシンB放出はNlrp3インフラマソームを活性化し、腫瘍増殖を促進する
Nature Medicine 19, 1 doi: 10.1038/nm.2999
化学療法薬はがん治療に広く使用されている。このような薬剤は直接の細胞傷害効果に加えて、宿主の免疫系も支配し、それが抗腫瘍作用を助けている。本論文では、臨床で使用されている2種類の化学療法薬、ゲムシタビン(Gem)と5-フルオロウラシル(5FU)が、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)で、Nlrp3(NOD-like receptor family, pyrin domain containing-3 protein)依存性のカスパーゼ1活性化複合体(インフラマソームと呼ばれる)を活性化し、それがインターロイキン1β(IL-1β)の産生を引き起こして、その結果抗がん免疫が抑制されることを示す。化学療法薬が誘発するIL-1β分泌は、リソソームの透過性上昇とカテプシンB放出に依存していた。カテプシンBはNlrp3に結合し、カスパーゼ1の活性化を推進した。MDSC由来のIL-1βはCD4+ T細胞によるIL-17分泌を引き起こし、それが化学療法薬の抗がん効果を減弱させた。そのため、Nlrp3−/−マウスあるいはCasp1−/−マウス、またはインターロイキン1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)を投与した野生型マウスで腫瘍を発生させた場合、Gemおよび5FUは、より高い抗腫瘍効果を発揮した。まとめると、これらの結果は、MDSCでの5FUおよびGemによるNlrp3インフラマソーム活性化が、これらの化学療法薬の抗腫瘍効果を制限する仕組みを明らかにしている。