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腎疾患:AKT2は慢性腎臓病の際の糸球体足細胞の生存と機能の維持に必須である
Nature Medicine 19, 10 doi: 10.1038/nm.3313
慢性腎臓病(CKD)では、機能できるネフロンが失われると、残っているネフロンに代謝的また機械的なストレスが加わって、ネフロンのさらなる喪失が起こる。本論文では、Akt2の活性化がネフロン減少後の足細胞の保護に重要な役割を果たすことを明らかにする。Akt2−/−マウスでは、野生型マウスに比べて糸球体硬化症およびアルブミン尿症が大幅に悪化したが、Akt1−/−マウスではこのような悪化は観察されなかった。足細胞でのAkt2、もしくはその調節因子Rictorの特異的欠失によって、Akt2が足細胞で固有の機能を担うことが明らかになった。作用機序としては、Akt2はMdm2(mouse double minute 2 homolog)、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3(Gsk3)およびRac1が関わる代償性プログラムを起動させる。ネフロン減少後にこの経路の活性化が障害されていると、足細胞のアポトーシスと足突起消失が起こる。また、ヒトCKDでの足細胞の生存維持には、mTORC2(mammalian target of rapamycin complex 2)によるAKT2活性化も必要であることが分かった。さらに我々は、シロリムス(ラパマイシン)が腎臓に及ぼす悪影響の基盤となる事象を解明し、シロリムスの合理的使用のための基準を示す。したがって今回の研究成果は、Akt2の新たな機能を明らかにし、CKDで糸球体機能を保持するための治療標的候補を明らかにしている。