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骨疾患:GNAS喪失によるヘッジホッグシグナル伝達活性化は異所性骨形成を引き起こす
Nature Medicine 19, 11 doi: 10.1038/nm.3314
異所性骨形成、すなわち骨格外骨の病的な形成は、外傷の一般的な合併症として、あるいは遺伝性疾患において起こり、障害や致死をもたらすことがある。しかし、その基盤となる分子機序はほとんど分かっていない。今回我々は、GαSが間葉系前駆細胞でヘッジホッグシグナル伝達の阻害により骨形成を骨格に限局させることを明らかにする。GαSをコードするGNASのヌル変異により引き起こされるヒト疾患の進行性骨性異形成症では、異所性に存在する骨芽細胞や前駆細胞でヘッジホッグシグナル伝達が上方制御されている。動物モデルでは、遺伝学的手法によって誘発した異所性のヘッジホッグシグナル伝達だけで異所性の骨形成が引き起こされ、一方でこのシグナル伝達の遺伝的あるいは薬理学的手段による阻害は、異所性骨形成の重症度を大幅に軽減する。我々は以前の研究で、GNASの機能獲得変異が骨芽細胞前駆細胞でWNT-β–カテニンシグナル伝達を上方制御して、その結果、骨芽細胞前駆細胞の分化異常と繊維性骨形成異常が生じることを示しており、GαSがWNT-β–カテニン経路とヘッジホッグ経路の間のバランス維持によって骨芽細胞の適切な分化をもたらす重要な調節因子であることが明らかになった。また、今回のマウスモデルにおける薬理学的研究の結果から、現在はがんなどの骨形成とは別の病態に対して臨床的に用いられているヘッジホッグ阻害剤が、異所性骨形成などのGNAS不活性化によりもたらされる疾患の治療に転用できる可能性が出てきた。