Letter
がん:PTENを欠失するグリオブラストーマでのShhとPI3Kによるシグナル伝達の協調的活性化:治療の新たな見込み
Nature Medicine 19, 11 doi: 10.1038/nm.3328
グリオブラストーマでは、PTEN(tumor suppressor phosphatase and tensin homolog)の欠失によりホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)シグナル伝達が活性化されていることが多い。しかし、PI3Kの阻害が選択的で有効性の高い治療法となるかどうかは分かっていない。我々は大規模データベースを調べ、PTENを欠失するグリオブラストーマではSHH(sonic hedgehog)シグナル伝達が活性化されることを見いだした。SHH経路とPI3K経路は、ヒトPTEN欠失グリオブラストーマで協働的に働いて腫瘍の増殖と生存を助けることが分かった。PI3Kシグナル伝達阻害薬とSHHシグナル伝達阻害薬の併用は、この2つの経路の活性化を抑制するだけでなく、S6キナーゼ(S6K)シグナル伝達をも停止させた。そのため、この両方の経路を同時に標的とすることは、有糸分裂の破綻と腫瘍細胞のアポトーシスを引き起こし、PTEN欠失グリオブラストーマの増殖をin vitroおよびin vivoで大幅に低減した。今回検証した薬剤はヒトに対して安全のように見える。したがって、このような併用はグリオブラストーマに対する新たな標的療法となる可能性がある。