Brief Communication
精神発達障害:CPEB1の遺伝的、あるいは急性の枯渇は脆弱X症候群の病態生理を改善する
Nature Medicine 19, 11 doi: 10.1038/nm.3353
脆弱X症候群(FXS)は遺伝性の精神遅滞や自閉症の最も多く見られる原因である。FXSは、翻訳抑制因子である FMRP(fragile X mental retardation protein)をコードしているFMR1の転写サイレンシングによって起こる。FMRPと翻訳活性化因子であるCPEB (cytoplasmic polyadenylation element-binding protein)は共にニューロンの樹状突起に存在し、多数の同じmRNAに結合すると予測されている。この2つは翻訳恒常性を調節していると考えられており、そのバランスの乱れがFXSの原因となっている可能性がある。この可能性と一致して、Fmr1−/y、Cpeb1−/−二重ノックアウトマウスでは、FXSと関連した生化学的、形態学的、電気生理学的表現型および行動表現型の改善が見られた。Fmr1−/y成体マウスの海馬でCPEB1を急性に枯渇させると、作業記憶の欠損が救済され、FXS表現型の回復が見られた。また、FMRPとCPEB1が、ポリペプチド鎖伸長のレベルで翻訳のバランスを制御することが分かった。今回の結果は、翻訳恒常性の乱れがFXSの原因であり、FMRPとCPEB1によるこの恒常性の維持が正常な神経機能に必須であることを示唆している。