Letter
神経疾患:神経疾患の新規治療法となる塩素イオン排出増強物質
Nature Medicine 19, 11 doi: 10.1038/nm.3356
K+-Cl−共輸送体KCC2は、中枢神経系(CNS)ニューロン内部のCl−を低濃度に維持するのに関わっており、低いCl−濃度はGABAAやグリシン受容体を介するシナプス後抑制に不可欠である。KCC2変異体と関連づけられているCNS疾患はまだないが、この輸送体の活性消失は、てんかん、運動痙縮、ストレス、不安、統合失調症、モルヒネ誘発性痛覚過敏や慢性疼痛などの複数の神経疾患や精神疾患に内在する重要な機序であることが明らかになっている。最近の報告では、KCC2活性の増強が、Cl−輸送障害が関連する病的状態で抑制と正常な機能を回復させるための有望な治療戦略となる可能性が示されている。我々は、細胞内Cl−濃度([Cl−]i)を低下させるKCC2活性化物質の同定につながるハイスループットスクリーニングのための分析法を設計した。画期的新薬であるアリルメチリジンファミリーの化合物の最適化により、[Cl-]iを低下させるKCC2選択的アナログ(CLP257)が得られた。CLP257は、KCC2活性が低下したニューロンでCl−輸送障害を回復した。CLP257はKCC2の細胞膜発現を回復させ、神経損傷後に感作された脊髄侵害受容経路での刺激誘発性応答を再度正常化し、神経障害性疼痛のラットモデルで過敏性を軽減した。CLP257プロドラッグの経口投与により、プレガバリンと同等の鎮痛効果が得られたが、運動障害は伴わなかった。これらの結果は、KCC2がCNS疾患に対する創薬の標的に値することを実証している。