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肝炎:感染量以下のC型肝炎ウイルスへの暴露はその後の急性感染に対するT細胞応答を抑制する
Nature Medicine 19, 12 doi: 10.1038/nm.3408
C型肝炎ウイルス(HCV)は持続感染を確立する傾向が強いため、多くの国で特定の地区に限って感染が多発している。HCVに繰り返し暴露された被験者で、HCVのRNAおよび抗体が検査で陰性で、HCV感染歴を持たない場合にHCV特異的T細胞が存在することは、T細胞を介する防御を示すと考えられてきた。今回我々は、微量のHCVを含むヒト血漿に反復暴露された非ヒト霊長類では、抗体陽転および全身性ウイルス血症を起こすことなく、HCV特異的T細胞が誘導されるが、その後のHCV攻撃投与による感染は防げないことを示す。このような動物ではHCV攻撃投与によって、HCV特異的な記憶免疫応答およびde novoT細胞応答、それに肝臓内のT細胞動員およびインターフェロンγ(IFN-γ)産生が抑制され、それに伴って、感染量以下のHCV暴露後に生成し、HCV攻撃投与後に増加した制御性T細胞(Treg細胞)に量的および質的な変化が起こった。in vitroでTreg細胞を枯渇させると、HCV特異的T細胞応答は回復した。したがって、微量のHCVによってプライミングされたT細胞は、その後のHCV感染に際して有効な記憶応答を生じない。感染量以下のHCVへの暴露によって、Treg細胞の増殖が起こりやすくなり、こうしたT細胞がその後の感染の際にエフェクターT細胞の増殖を抑制する。暴露によって誘導されたこの免疫抑制を回復させる戦略を検討することは、HCVなどの風土性病原体に対するT細胞ワクチンの開発に有用となるだろう。