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肥満:脂肪分解、熱産生および酸化的代謝の調節因子であるTRIP-Br2の除去は食餌性肥満とインスリン抵抗性を防止する
Nature Medicine 19, 2 doi: 10.1038/nm.3056
肥満は、エネルギー恒常性が脂肪貯蔵傾向へ変化した結果として生じる。本論文では、脂肪過多およびエネルギー代謝の新しい転写コレギュレーター、TRIP-Br2(SERTA domain containing 2、別名SERTAD2)について述べる。TRIP-Br2ヌルマウスは肥満や肥満に関連するインスリン抵抗性に耐性を示す。このノックアウトマウスの脂肪細胞は、ホルモン感受性リパーゼ(HSL)やβ3-アドレナリン(Adrb3)受容体の発現上昇に伴い、脂肪分解が大幅に促進されていた。このノックアウトマウスはエネルギー消費量も高いが、それは脂肪細胞の熱産生や酸化的代謝の各過程にかかわる主要な酵素の発現上昇により、これらの過程が亢進しているためである。我々のデータは、細胞周期の転写コレギュレーターであるTRIP-Br2が、脂肪分解、熱産生および酸化的代謝の同時調節により脂肪貯蔵を調節することを示している。これらのデータは、TRIP-Br2発現が肥満患者の内臓脂肪で選択的に上昇しているという観察とともに、この転写コレギュレーターが肥満、インスリン抵抗性および高脂血症の発症を防ぐ新しい治療標的であることを示唆している。