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造血:上皮増殖因子は放射線障害後の造血再生を調節する
Nature Medicine 19, 3 doi: 10.1038/nm.3070
骨髄抑制を引き起こすような損傷を受けた後の造血幹細胞(HSC)の再生を調節する機構はあまりよくわかっていない。我々は、TIE2発現細胞にBakとBaxが欠失しているTie2Cre; Bak1−/−;Baxflox/−マウスの骨髄血清中に、上皮増殖因子(EGF)が非常に豊富に存在することを突き止めた。このようなマウスでは、致死量の放射線全身照射(TBI)後にHSCプールが放射線から防護されており、100%の生存がみられた。野生型マウスの骨髄HSCは機能を備えたEGF受容体(EGFR)を発現しており、また、EGFの全身投与は、in vivoでHSCプールの回復を促進し、TBI後のマウスの生存を向上させた。これとは逆に、EGFRアンタゴニストのエルロチニブの投与は、TBI後のHSC再生とマウスの生存の両方を低下させた。VAVを発現している造血細胞にEGFRが欠損しているマウスでも、TBI後の骨髄幹・前駆細胞の回復に遅れがみられた。機構としては、EGFは、HSCの放射線誘導性アポトーシスを減少させており、こうした影響はアポトーシス促進タンパク質PUMAの抑制によって生じる。我々の知見は、EGFRシグナル伝達が、骨髄抑制につながる損傷を受けた後のHSC再生を調節することを示している。