Article 免疫:ワクチン接種部位に残存する抗原は腫瘍特異的なCD8+ T細胞の隔離や機能障害、消失を引き起こす 2013年4月1日 Nature Medicine 19, 4 doi: 10.1038/nm.3105 がんワクチンに誘導されたT細胞は、腫瘍を根絶できないことが多い。我々はその理由を解明するために、がんワクチンの臨床試験で一般的に用いられている不完全フロインドアジュバンドに混合したgp100黒色腫ペプチド(ペプチド/IFA)をマウスにワクチン接種し、免疫応答を調べた。ペプチド/IFAワクチンの接種は腫瘍特異的CD8+ T細胞をプライミングし、このようなT細胞は腫瘍ではなく、抗原が多く残存するワクチン接種部位に集積した。プライミングされたT細胞は、接種部位に隔離されると正常に機能しなくなり、抗原に誘導されたインターフェロンγ(IFN-γ)やFasリガンド(FasL)を介するアポトーシスを起こし、その結果、その後のワクチン接種に対する低応答性が生じた。CD40特異的抗体やToll様受容体7(TLR7)アゴニスト、インターロイキン2(IL-2)の投与によりT細胞のアポトーシスは減少したが、ワクチン接種部位への隔離は防止されなかった。接種部位での残存性の低いワクチン製剤を用いるとT細胞が腫瘍のほうに局在するようになり、より強い抗がん活性が誘導され、全身的なT細胞機能不全が減少し、記憶形成が促進された。以上の結果は、残存性ワクチンの蓄積が、ワクチン接種部位でのT細胞特異的な隔離や機能不全、さらに消失を誘導する可能性を明らかにしている。短寿命の製剤を用いることで、このような制約が解消され、ペプチドを用いたがんワクチンの治療効果が大幅に改善されるかもしれない。 Full text PDF 目次へ戻る