Article 粘膜炎:Smad7が放射線誘発性口腔粘膜炎に及ぼす予防的および治療的影響 2013年4月1日 Nature Medicine 19, 4 doi: 10.1038/nm.3118 本論文では、ケラチン5プロモーターの制御下でSmad7導入遺伝子を発現するK5.Smad7マウスが、有痛性口腔内潰瘍である放射線誘発性口腔粘膜炎に抵抗性を示すことを報告する。この症状のみられるマウス由来の細胞では、口腔粘膜炎に関わることが知られているNF-κB活性化に加えて、トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)シグナル伝達が活性化されていることがわかった。Smad7はこれら2つの経路を抑制することで、炎症、増殖阻害およびアポトーシスを軽減した。また、Smad7は口腔上皮細胞の移動を促進して傷をふさいだ。さらなる解析から、TGF-βシグナル伝達経路の複数のSmadやそのコリプレッサーであるCtBP1(C-terminal binding protein1)がRac1の転写を抑制すること、また、Smad7はこの抑制を解除することが明らかになった。マウスの角質細胞でRac1発現をノックダウンすると、Smad7によって誘導される移動がみられなくなった。細胞透過性Tatタグを結合したSmad7タンパク質を口腔粘膜に局所投与すると、マウスの放射線誘発性口腔粘膜炎に対する予防的および治療的な影響がみられた。したがって、我々は口腔粘膜炎の発症機序に関与する新規な分子機構を明らかにした。また我々のデータは口腔粘膜炎に関わる複数の病理学過程を阻止するためのまったく別の治療戦略を示唆している。 Full text PDF 目次へ戻る