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神経疾患:Peli1はTraf3分解の調節によりミクログリア介在性のCNS炎症を促進する
Nature Medicine 19, 5 doi: 10.1038/nm.3111
ミクログリアは、多発性硬化症やその動物モデルである実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE)の病理発生に極めて重要である。今回我々は、E3ユビキチンリガーゼPeli1がミクログリアで豊富に発現しており、EAE発症誘導過程でミクログリア活性化を促進することを示す。Peli1は、ミクログリアでケモカインと炎症性サイトカインの誘導に関わっており、それによってT細胞の中枢神経系への動員を促進する。Peli1欠損マウスでは、末梢リンパ器官で炎症性T細胞が十分誘導されるにもかかわらず、EAEの重症度は軽減される。特に、Peli1はマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)活性化と遺伝子誘導の強力な阻害因子であるTraf3(TNF receptor-associated factor 3)の分解促進によって、Toll様受容体(TLR)経路シグナル伝達を調節する。Peli1欠損マウスでTraf3を除去すると、EAE誘導後のミクログリア活性化とCNS炎症が復活する。以上の結果は、Peli1が自己免疫性神経炎症のミクログリア特異的メディエーターであることを確証しており、Peli1が関わるこれまで知られていなかったシグナル伝達機構を示唆している。