Letter 生理:成人頸部褐色脂肪の解剖学的所在、遺伝子発現プロファイリングと機能的特性 2013年5月1日 Nature Medicine 19, 5 doi: 10.1038/nm.3112 エネルギーの摂取と消費の不均衡は、現在世界中でみられる肥満や糖尿病の根本原因であり、このような病状の中心となるのは脂肪の蓄積である。白色脂肪組織(WAT)は余分なカロリーを蓄積し、褐色脂肪組織(BAT)は、組織特異的な脱共役タンパク質1(UCP1)を用いる熱産生のためにエネルギーを消費する。BATは以前、齧歯類とヒト幼児においてのみ機能していると考えられていたが、最近になって、成人のBATが中程度の寒冷刺激に対して、他のどのような組織よりもグラムあたりのグルコース消費量が多いことが示された。このような非ふるえ産熱に加えて、ヒトBATには全身のエネルギー摂取が増加した状況でより活性を増大させることで体重増加に対抗している可能性がある。BATを介した食餌誘導性産熱というこの現象は齧歯類で観察されており、ヒトBATの活性化は肥満や代謝調節不全に対する安全な治療法として使える可能性が考えられる。我々は、成人提供者から解剖学的にはっきり認められる範囲の頸部脂肪を単離し、その遺伝子発現、分化能および基礎酸素消費量をマウスのさまざまな脂肪組織と比較した。ヒト頸部脂肪の特性は個体間でかなり変動するが、ヒト標品の一部は、齧歯類の古典的BAT(構成性BATとも呼ばれる)と多くの共通点があった。 Full text PDF 目次へ戻る