Letter 代謝:Baf60cは筋肉の解糖系代謝を駆動し、Deptorが仲介するAkt活性化を介して全身のグルコース恒常性を改善する 2013年5月1日 Nature Medicine 19, 5 doi: 10.1038/nm.3144 2型糖尿病でみられる骨格筋のインスリン抵抗性は、酸化的代謝から解糖系代謝への移行と関連づけられてきた。しかし、この代謝方式の切り替えが有害なものなのか、それとも適応なのかについてはまだ議論が続いている。その理由の一部は、解糖系が作動している速筋の代謝および収縮特性を支配している調節ネットワークの解明が十分でないことにある。本論文では、速筋に多く存在する転写共役因子のBaf60c(別名Smarcd3)が、Deptor(DEP domain-containing mTOR-interacting protein)を介するAkt活性化によって、筋繊維の酸化的代謝型から解糖系型への切り替えを促進していることを示す。遺伝子導入によりBaf60cを筋特異的に発現させると、解糖系型の筋でみられる分子的、代謝的および収縮的変化のプログラムが活性化される。さらに、in vivo成体骨格筋での解糖能の維持にはBaf60cが必要である。肥満マウス骨格筋でのBaf60c発現は、痩せたマウスの骨格筋に比べて大幅に低い。遺伝子導入によるBaf60c発現を介して解糖型筋プログラムを活性化してやると、マウスで食餌によって誘発されるインスリン抵抗性およびグルコース不耐性が生じにくくなる。さらに機構解析を行ったことで、DeptorがBaf60c-Six4転写複合体によって発現誘導され、Baf60cによるAkt活性化と解糖系代謝を細胞自律的に仲介していることが示された。今回の結果は、速収縮性で解糖系代謝を行う筋繊維の特性の基盤となっている根本的機序を明らかにしており、骨格筋における酸化的代謝から解糖系代謝への移行がおそらく適応的なもので、糖尿病状態では有利に働く可能性を示している。 Full text PDF 目次へ戻る