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動脈硬化:赤肉に含まれる栄養素のL-カルニチンは腸内細菌叢の代謝を受けてアテローム性動脈硬化を促進する

Nature Medicine 19, 5 doi: 10.1038/nm.3145

コリンとホスファチジルコリンが腸内細菌叢による代謝を受けるとトリメチルアミン(TMA)が産生され、これらはさらに代謝を受けてアテローム発生促進物質であるトリメチルアミン-N-オキシド(TMAO)となる。L-カルニチンは、赤肉に豊富に存在するトリメチルアミンだが、今回我々はマウスを用いて、食物中のL-カルニチンの腸内細菌叢による代謝でもTMAOが生じ、アテローム性動脈硬化が加速されることを明らかにした。雑食のヒト被験者ではL-カルニチン摂取後に、完全菜食主義者または菜食主義者よりも多くのTMAOが細菌叢の働きによって産生された。ヒト糞便中の特定の細菌群の存在は、血漿TMAO濃度および食餌状況の両方と関連していた。心機能評価を受けている被験者(n=2,595)の血漿L-カルニチン濃度は、心血管疾患(CVD)の有病率ならびに主要有害心事象(心筋梗塞、脳卒中または死亡)の罹患率の両方に対するリスク上昇と関連していたが、これはTMAOが高値の被験者だけであった。マウス食餌への長期にわたるL-カルニチン添加は盲腸細菌叢の構成を変化させ、TMAおよびTMAOの合成を著しく亢進し、アテローム性動脈硬化を促進したが、添加に並行して腸内細菌叢を抑制した場合には促進は起こらなかった。無傷の腸内細菌叢を有するマウスでは、食餌へのTMAO添加、あるいはカルニチンまたはコリンのいずれかの添加がin vivoでのコレステロール逆転送を低下させた。したがって、腸内細菌叢は今回確証された赤身肉の大量摂取とCVDリスクの間にみられる関連性を生じる一因となっている可能性がある。

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