Letter がん:IQGAP1足場キナーゼの相互作用遮断はRAS-MAPキナーゼによる腫瘍を選択的に標的とする 2013年5月1日 Nature Medicine 19, 5 doi: 10.1038/nm.3165 ERK1およびERK2(ERK1/2)MAPキナーゼ(MAPK)カスケードの上方制御は、がんの30%以上で起こっており、受容体型チロシンキナーゼ、あるいはKRASやBRAFのような上流遺伝子の活性型変異を介していることが多い。内在性MAPKを治療標的とする取り組みは、これらのキナーゼが哺乳類の生存に必要とされるために困難となっている。また、変異型BRAFに対する新たな阻害剤の効果は、ERK1/2を誘導するBRAF非依存的な機構の選択による腫瘍の耐性獲得のために低下してきている。さらに最近、黒色腫で見つかったMEK1およびMEK2(MEK1/2)MAPK遺伝子内のERK1/2誘導性変異は、新たに開発されたMEK阻害治療薬に対する耐性を生じさせ、がんの直接的なキナーゼ阻害が直面する難問が強調された。IQGAP1(IQ motif-containing GTPase activating protein 1)のようなMAPKの足場タンパク質は、経路のキナーゼを集合させてシグナル伝達に影響を及ぼす。したがって、足場機能の破壊はMAPKカスケード阻害のまったく異なる手法となる可能性がある。我々がマウスとヒトの組織でRASによる腫瘍形成にIQGAP1が必要とされることを見いだしたのは、この考え方と一致する。さらに、ERK1/2に結合するIQGAP1のWWドメインのペプチドは、IQGAP1とERK1/2の相互作用を妨げ、RASやRAFが促進する腫瘍形成を阻害し、BRAF阻害剤ベムラフェニブ(PLX-4032)に対する獲得耐性を回避して、全身的に送達可能な治療薬として作用し、担がんマウスの寿命を大幅に延長した。足場キナーゼ相互作用の遮断は直接的なキナーゼ阻害とは異なる機構で作用するので、がんで過剰に活性化している発がん性キナーゼカスケードを標的とする戦略となる可能性がある。 Full text PDF 目次へ戻る