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代謝疾患:視床下部のグルカゴンシグナル伝達は肝臓のグルコース産生を抑制する

Nature Medicine 19, 6 doi: 10.1038/nm.3115

グルカゴンは肝臓のプロテインキナーゼA(PKA)を活性化し、グルコース産生を増加させる。しかし、このグルコース産生促進効果は、グルカゴンの静脈内持続注入を行っている場合でさえ、一過的である。一方、インスリンの静脈内持続注入は、肝臓および内側基底視床下部(MBH)の両方で持続的に作用することによりグルコース産生を抑制する。ラットでは、膵クランプ条件下でMBHへのグルカゴン注入を行うと、MBHのPKAが活性化され、肝臓でのグルコース産生(HGP)が抑制されたが、これはマウスで中枢神経系へのグルカゴン注入を行った場合と同様の結果であった。ラットでは、MBHでのグルカゴン受容体−PKAシグナル伝達の阻害や肝臓での迷走神経切除は、どちらもMBHへのグルカゴン注入の影響を打ち消す。一方、グルカゴンの中枢神経系への注入の影響は、グルカゴン受容体ノックアウトマウスでは見られなくなる。血漿グルカゴン濃度を高いままに維持すると、HGPが一過的に上昇するが、MBHでのグルカゴン作用が阻害されたラットでは、この一時的HGP増加が見られなくなった。膵非クランプ条件では、MBHへのグルカゴン注入により耐糖能が改善され、MBHでのグルカゴン受容体−PKAシグナル伝達の阻害が、グルカゴン静脈内注入の効果を高め、血漿グルコース濃度が上昇した。高脂肪食を与えられたラットでも、グルコース濃度の同様の上昇が見られ、これはMBHでのグルカゴンシグナル伝達系の破壊と関連していた。我々の結果は、視床下部のグルカゴンシグナル伝達がHGPを抑制することを示しており、また、視床下部のグルカゴン抵抗性は糖尿病や肥満における高血糖に寄与すると考えられる。

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