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血管疾患:セマフォリン3dシグナル伝達の異常は肺静脈結合異常症と関連する

Nature Medicine 19, 6 doi: 10.1038/nm.3185

総肺静脈結合異常症(TAPVC)は、致死となる可能性がある先天性疾患であり、肺静脈が左心房に正常に連結しないことによって生じ、肺血流と体血流の混合が見られる。動脈血管のパターン形成が詳しく知られているのとは対照的に、静脈のパターン形成についてはあまりわかっていない。本研究では、分泌型ガイダンス分子セマフォリン3d(Sema3d)が、肺静脈の正常なパターン形成に極めて重要であることを示す。一般的なモデルでは、総肺静脈の前駆組織であるmidpharyngeal endothelial strand(MES)が、胚の共通心房の背側表面上の適切な位置に形成されなかった場合に、TAPVCが生じると考えられている。しかし我々は、Sema3d変異マウスではMESが正常に形成されるにもかかわらず、TAPVCが生じることを見いだした。このような胚では、成長する肺静脈叢が適切に形成されたMESと一意的に吻合しない。Sema3dが欠損している場合、本来ならば血管の存在しない領域で内皮管形成が起こり、その結果として異常な連結が生じる。正常な状態では、Sema3dがこの領域で内皮細胞に反発シグナルを送り、境界を確立する。また、肺静脈異常症の患者のSEMA3Dの塩基配列解読から、フェニルアラニンからロイシンへの置換が見つかった。この変異はSEMA3D機能に悪影響をもたらす。以上の結果は、Sema3dが肺静脈のパターン形成シグナルとして非常に重要であることを明らかにし、肺静脈結合異常を説明する新たな発生モデルについての実験的証拠を示している。

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