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ウイルス感染:C型肝炎ウイルス感染は脂質生合成やウイルス粒子組み立てのIKK-αが関わる自然免疫経路を活性化する
Nature Medicine 19, 6 doi: 10.1038/nm.3190
C型肝炎ウイルス(HCV)は宿主因子と広く相互作用して増殖感染を成立させるのみならず、独特な病的過程を引き起こす。我々が最近行った全ゲノムsiRNAスクリーニングによって、IκBキナーゼα(IKK-α)がHCVにとって不可欠の宿主因子であることが示された。本論文では、HCVのウイルス粒子組み立てに際して、IKK-αが核で果たす、NF-κB非依存的でキナーゼ活性を介する新規機能について述べる。HCVは、その3'非翻訳領域を介してDDX3X(DEAD box polypeptide 3, X-linked)と相互作用しIKK-αを活性化する。次いでIKK-αは核へ移行し、CBP/p300が仲介し、ステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)が関与する転写因子プログラムを誘導する。この自然免疫経路は脂質生合成に関わる遺伝子発現を誘導し、HCVのコアタンパク質が関わる脂肪滴形成を増強することでウイルス粒子組み立てを促進する。IKK-αの化学的阻害剤は、HCV感染やIKK-αが誘導する脂肪生合成を抑制し、これはHCVの新しい治療法開発についての概念証明となる。今回の結果は、内因性の自然免疫応答を利用して脂肪代謝を乗っ取るという新規な機序をHCVが用いていることを明らかにしており、これはHCV感染における高い慢性化率や脂肪蓄積という特徴的病態の一因となっていると考えられる。