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腫瘍:BCAT1は野生型IDH1を有するグリオーマでアミノ酸異化作用を介して細胞増殖を促進する
Nature Medicine 19, 7 doi: 10.1038/nm.3217
本論文では、グリオブラストーマが、分枝アミノ酸(BCAA)の異化を開始する酵素である分枝アミノ酸トランスアミナーゼ1(BCAT1)を高レベルに発現していることを示す。BCAT1発現は野生型イソクエン酸デヒドロゲナーゼ1(IDH1)およびIDH2遺伝子を有する腫瘍に限られており、またBCAT1プロモーター領域のメチル化パターンと高い相関がみられた。BCAT1発現は、グリオーマ細胞株の基質であるα-ケトグルタル酸の濃度に依存しており、またヒトの不死化アストロサイトでは変異型IDH1の異所性過剰発現によって抑制できるため、IDH1の機能とBCAT1発現の間には関連があることがわかった。グリオーマ細胞株でのBCAT1の阻害によって、グルタミン酸排出が遮断され、in vitroでの増殖と浸潤性の低下に加えて、グリオブラストーマ異種移植片モデルでは腫瘍増殖が大幅に低下した。これらの知見は、グリオーマの病因にBCAT1が重要な役割を持つことを示唆しており、BCAT1およびBCAA代謝はグリオブラストーマ患者のための標的化治療法開発の有望な標的となると考えられる。