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がん:ETS因子はPTENの欠失に応答してアンドロゲン受容体シストロームを再プログラム化し、前立腺がん形成を準備する
Nature Medicine 19, 8 doi: 10.1038/nm.3216
ETSを介した前立腺がん形成に関する研究は、適切な実験系がなかったことで進捗が妨げられていた。本研究では、前立腺全体にわたってロバストで均一なERG発現を示す、新たなコンディショナルマウスモデルについて報告する。このマウスは、ホモ接合のPten欠失と組み合わせると、高浸透度で進行の早い浸潤性の前立腺がんを発症した。マウスの前立腺組織ではERGがアンドロゲン受容体(AR)の結合を顕著に増加させた。ERGを介したロバストな転写変化は、Ptenを欠失した状態でだけ見られ、AR転写アウトプットの回復や、細胞死、細胞移動、炎症、血管形成に関わる遺伝子の上方制御を引き起こした。同様に、ETV1(ETS variant 1)は、ETV1の転座とPTENの欠失が起きたヒトの前立腺がん細胞でのARシストロームおよび転写アウトプットを正に制御した。2つの大規模臨床コホートで、ERGとETV1の発現は、PTENの欠失した前立腺がん検体での高いAR転写アウトプットと相関していた。ETS因子群は、ARシストロームを変化させ、前立腺上皮をPTENの欠失のような異常な上流シグナルに応答しやすくすることで、前立腺特異的な形質転換を引き起こすと考えられる。