糖尿病:チオレドキシン相互作用タンパク質はマイクロRNA204を介してインスリン転写を調節する
Nature Medicine 19, 9 doi: 10.1038/nm.3287
ベータ細胞の機能不全やインスリン産生障害は糖尿病の特徴である。だが、糖尿病の発生数が増加し続けているにもかかわらず、この疾患の基盤となる分子機構はいまだに不明である。以前我々は、細胞の酸化還元調節因子であるチオレドキシン相互作用タンパク質(TXNIP)が、ベータ細胞の生物学的性質に不可欠な因子であることを明らかにし、また、糖尿病ではベータ細胞のTXNIPが上方制御されている一方で、TXNIPの欠損はベータ細胞のアポトーシス防止により糖尿病を起こりにくくすることを明らかにした。本研究では、TXNIPと糖尿病が、ベータ細胞でmiR-204という特定のマイクロRNAの発現を誘導し、miR-204が既知のインスリン転写因子であるMAFAを直接の標的として下方制御して、インスリン産生を阻害することを示す。我々はマイクロアレイ解析を使って、miR-204がTXNIPによって調節されていることをまず見いだし、続いてINS-1ベータ細胞、Txnip欠失マウスの膵島、糖尿病マウスモデル、そしてヒト膵島の初期培養でこのことを確認した。次いで、TXNIPは、miR-204の調節に関わる転写因子のSTAT3(signal transducer and activator of transcription 3)の活性阻害により、miR-204を誘導することを見いだした。また、MAFAがmiR-204の標的として下方制御を受けることも明らかにした。まとめると我々の結果は、TXNIPがマイクロRNAの発現とインスリン産生を制御していること、miR-204がベータ細胞の機能に関与していることを明らかにしている。新たに明らかになったTXNIP–miR-204–MAFA–インスリン経路は、糖尿病の進行の一因となっている可能性があり、健常状態と病的状態でのTXNIPの機能とマイクロRNAの生物学的性質に関する新たな手掛かりを与えてくれる。