Technical Report
敗血症:敗血症治療のための体外血液浄化装置
Nature Medicine 20, 10 doi: 10.1038/nm.3640
本論文では、脾臓にヒントを得た敗血症治療用の血液浄化装置について報告する。この装置は、感染病原体を事前に特定しなくても、血中から病原体や毒素を持続的に除去できる。感染個体から引き出した血流に遺伝子操作したヒトオプソニン(マンノース結合レクチン:MBL)で被覆した磁気ナノビーズを混合することで、補体因子の活性化や血液凝固を起こすことなく幅広い種類の病原体や毒素を捕捉する。磁石を使って、オプソニンに結合した病原体や毒素を血中から引き出して取り除き、浄化された血液を元の個体に戻す。この「バイオ脾臓」はin vitroで1時間に最大1.25リットルの処理速度で、単一のバイオ脾臓ユニット内を流れるヒト全血から、多数のグラム陰性細菌、グラム陽性細菌、真菌類および内毒素を効率的に除去する。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)または大腸菌(Escherichia coli)を感染させたラットの場合、このバイオ脾臓によって血液中から細菌の90%以上が除去され、多数の臓器で病原体や免疫細胞の浸潤が低減し、炎症性サイトカイン量が低下した。内毒素血症ショックのモデルでは、このバイオ脾臓での5時間の処置によって生存率の上昇が見られた。